株式会社SAGA 代表取締役「坂本 圭志」さん

大手アパレル会社勤務から清掃業社長へ。
その大胆ともいえる転身の理由には、「生まれ育った高知をなんとかしたい」という強い思いがあった。
「清掃」の枠を超え、「店づくり」「まちづくり」へと繫がる坂本さんの取り組みは、高知はもちろん、
疲弊した地方を豊かにするヒントが、実は隠されているかも知れない。

 

 坂本さんが大学卒業後就職したのは、今や世界規模で店舗を展開する大手アパレルメーカー。「いずれ起業したかったので、まずは一流企業でノウハウを身につけたかった」。そこで働くうちに、転機となる話を耳にした。それは1994年から2001年の間、ニューヨーク市長を務めたルドルフ・ジュリアーニ氏の逸話だ。同氏は当時犯罪都市として悪名高かったニューヨークを改革。犯罪率を減らし、安心して人が集える都市に再生した。その取り組みのひとつが、同市地下鉄の美化だった。「これを高知に応用できるのでは」と思った坂本さんは、高知の2店舗の副店長まで登りつめた勤務先を退職。清掃業の起業に向けて勉強を始めた。


 起業にあたり、横浜市で成功を納めた清掃業者に修業へ出向いた坂本さん。そこで教わったのは現在の基礎となる営業スタイル。つまり大規模な施設ではなく、個人経営の美容室やクリニックを顧客にすること。「少ない大口のお客様より、小規模でも多くのお客様を獲得すればリスクも少ない」。しかし起業後、初月の売上げはたった3万2千円。アパレルとは全く異なる業界で人脈もなく、一日100件の飛び込み営業をこなすものの、簡単には成果が上がらなかった。


 ある日、雑誌を読んでいた坂本さんは地元タレント・土佐かつおさんの記事を目にした。かつおさんの「地元高知を盛り上げたい」という思いに打たれ、意を決して彼のもとを訪ねた。そこで二人は意気投合。かつおさんに異業種交流会「あった会」を紹介され、そこで人脈が一気に広がることになった。「かつおさんには本当に感謝している」。地道な営業とあった会での人脈を活かし、次第に事業は軌道に乗り始めた。


 株式会社SAGAの業務は、単に清掃だけではない。「そのお店に人が集うための仕掛け作りのお手伝いです」と坂本さんは語る。人がお店に足を運ぶのためは、人、商品、店舗という三つの要素のそれぞれが魅力を持つ必要がある。同社が担うのは店舗の魅力作り。清潔感があり美しい空間を保つこと、そしてそのノウハウを伝えていくのが仕事だ。ワックスがけひとつとっても、床材、歩行頻度など、様々な条件に応じたワックスが求められる奥の深い作業。美しい状態をできるだけ長く保てることも重要だ。それにより清掃の手間が省け、その店は業務に専念できるようになる。


 これまで培ってきたそんなノウハウを、今、坂本さんは一般家庭へと伝えていきたいという。ハウスクリーニングはもちろん、洗剤の使用方法など効率的な掃除のノウハウを広めていくことに注力する。「掃除という家事を減らすことで、専業主婦の方の自由な時間が増える」。そのことで働き始めたり、趣味に時間を費やしたりと、新たな経済活動が生まれる。それが労働力不足や消費拡大に繋がり、最終的には地元高知の活性化に貢献できるというのだ。


 名刺のコピーである「お掃除しない清掃会社」を再度読み返す。なるほど、もちろん掃除はするけども、それだけではなく、その先にある豊かな社会をつくっていく会社なんだと改めて理解できた。

 

 

厨房換気扇周りのクリーニング(麺処あきちゃん【開店前施工】) 左が処理前、右が処理後。油汚れのひどい厨房の換気扇周りもピカピカに。清掃後、汚れが付きにくい処理や簡単に汚れが取れる工夫も行うのが同社の強み。
ポリッシャーによるワックスがけ。入念な下見を行い、状況に応じたワックスを使用することで、美しさが長く保たれる。
ミーティング風景。少数精鋭の同社はスタッフの意思疎通も万全。きめの細かいミーティングを常に行い情報共有を心がけている。
サッカーチーム「高知ユナイテッドSC」のマスコットキャラクター「ユナゴリ君」を考案。非公認ながら各イベントで活躍中!

 

株式会社SAGA
●設立/2011年11月 ●従業員数/5名(男性2名、女性3名)
代表取締役坂本圭志さんの生まれ故郷である
旧・佐賀町(現・黒潮町)の名前が社名の由来。
美容室やクリニックなどで、
プロの清掃スタッフによる専用機械での定期清掃を行う。
また一般家庭でのハウスクリーニングや
掃除のノウハウのレクチャーなども行い
「掃除ゼロ」から新たな経済活動を生むことを目指している。